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席から立ち上がり、朱里が寝転がっている向かいのソファーに座った。
「どういう、こと?
貴女は言ったわ。“数奇な運命に生まれたイキモノだ”、って……。
どうして、“ヒト”じゃないの?
どうして、“イキモノ”なんて言い方したの?」
「…………」
朱里は上を見たまま、闇のような黒に染まった瞳に哀しみを滲ませていた。
「私からはこれ以上、彼女たちのことを話すことはできない」
エレナが理由を訊きかけたとき、それを遮るように朱里が言葉を続けた。
「これは、彼女たちの口以外からは話されてはいけない話だ。
聞きたいのなら、東西の助言者たちから直接聞かなければならない」
「……そう。ならこれ以上、貴女に聞いても無駄ってことね」
「そうだ。だからこの話はこれで終わりだ」
エレナは少し考え込む様子で黙り込み、しばらくしてテーブルに戻りデザートに手をつけた。
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