すれ違う三つ

12/67
前へ
/73ページ
次へ
席から立ち上がり、朱里が寝転がっている向かいのソファーに座った。 「どういう、こと? 貴女は言ったわ。“数奇な運命に生まれたイキモノだ”、って……。 どうして、“ヒト”じゃないの? どうして、“イキモノ”なんて言い方したの?」 「…………」 朱里は上を見たまま、闇のような黒に染まった瞳に哀しみを滲ませていた。 「私からはこれ以上、彼女たちのことを話すことはできない」 エレナが理由を訊きかけたとき、それを遮るように朱里が言葉を続けた。 「これは、彼女たちの口以外からは話されてはいけない話だ。 聞きたいのなら、東西の助言者たちから直接聞かなければならない」 「……そう。ならこれ以上、貴女に聞いても無駄ってことね」 「そうだ。だからこの話はこれで終わりだ」 エレナは少し考え込む様子で黙り込み、しばらくしてテーブルに戻りデザートに手をつけた。 .
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加