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「エレナ様、起きてください。到着しましたよ、エレナ様」
「―――ん……」
車の後部座席で、流れていく窓の外の景色を眺めていたエレナは、いつの間にやら眠ってしまったようだ。
エルダに揺すり起こされて、初めて頬が濡れていることに気が付く。
それは、自分の気が付かぬうちに、涙が流れていたことを意味していた。
「エレナ様、少し落ち着かれて、それからでも……」
「時間が惜しいわ。私には、彼女の言葉と存在が必要だから」
「でも……」
「何も言わないで。全ては私が決めたことよ」
エレナは、わざと冷たく言い放った。
エルダはそれでもなお、エレナのことを心配している。
「大丈夫、ですか?」
涙を拭う為に頬を服の袖でゴシゴシ擦っていたエレナは、エルダのその言葉に硬直したように動きを止めた。
そして少しだけ濡れた目をエルダに向け、
「国の未来は、私の涙なんて関係ないわ。さぁ、行きましょう」
ふっと表情を緩め、穏やかな口調でそう言った。
エルダは哀しげな瞳に何も言えず、そのまま後ろについて歩いていった。
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