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そのとき、窓の外を見ていた女性が振り向く。
白い肌に美しいほどの紅蓮が、エレナとエルダの二人を捉える。
そしてにっこりと微笑みかけた。
「久しぶりね、エルダ。待っていたのよ、貴方がエレナ王女と此処にやって来るこのときを」
そう言いながら、ゆっくりとした歩調で二人に近づく。
今度はエレナに向かって言葉をかけた。
「そして、貴女たちと逢うのは初めてね。
初めまして、凛、と呼んで頂戴。
東の助言者とも呼ばれているけど、貴女たちとは長い付き合いになりそうだわ」
「よろしく、お願いします。
その…、私の“契約”のこと、ご存知なのですか?」
「ええ、知っているわ。
―――辛かったでしょう」
そう言いながら目を細め、凛はエレナを抱き締めた。
「凛…、さん……?」
「辛かったでしょう。涙を流すことも、弱音を吐くことも許されずに。
誰かの優しさにも背を向けて、哀しみを必死に堪えて。
―――辛かったでしょう。
本当に、辛かったでしょう……」
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