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ふんわりと、香水の香りがエレナの鼻孔をつく。
その香りさえも凛の優しさに思えるくらい、エレナを大切に、そっと抱き締めてくれた。
「どうして…、そんなことを、言ってくれるんですか。これから旅立つ私に、どうしてそんな優しさをくれるんですか……?」
エルダはエレナの左頬に流れる、一筋の涙を見た。
エレナはあの悲劇から、エルダの前で涙を流したことはなかった。
きっと誰よりも哀しくて、きっと誰よりも自分を責めている筈なのに。
幼い頃からずっと傍で仕えていたのに、ずっと感情を表に出さず、全てはこの国を救う為に。
だが、初対面である凛の胸の中でボロボロ涙を零すエレナを見たエルダは、
「畜生……」
そう呟き、ぐっと拳に力を込めた。
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