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「さて―――。聴きましょう、貴女たちの話。
大体のコトは、分かっているけれど。
それでも……、貴女の口から聴くことで、貴女の口で言うことで、それは少なからず、貴女の強さになっていくから」
「……朱里。出てきて。
どうか私の隣にいて」
「…………」
朱里は無言で、エレナの隣に腰掛けていた。
「お茶が、もう一つ必要のようね。あとでティナに用意させるわ。そして、貴女とも初対面よ、私の記憶が正しければ」
「ご安心を、東の助言者。私の記憶の中でも、私たちは初対面です。初めまして」
「初めまして、歴史の干渉者」
二人とも軽く会釈して、凛がエレナに視線を戻した。
「私、分からなくて。国王と王妃を死に追いやった責任は全て、この私に在るのに。
朱里と契約したときは、この国の為って思ったけど………。
でも今は、この私がのうのうと生きてていいのか」
エレナは目を伏せて、そうポツリと漏らした。
朱里の表情が、少しだけ哀しみに歪んだ。
「……私…、分からなくて―――……」
そう言ったエレナの肩は小刻みに震え、ぐっと歯を噛み締め、溢れそうになる涙を必死に押さえ込んでいるように見える。
だが、彼女の小さな努力も虚しく、涙がポロリと零れ落ちた。
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