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エレナと呼ばれた、セミロング程の長さの髪の毛を持つ少女が、少し小麦色に焼けた顔に苦笑いを浮かべる。
「姉さんは、ナイトをとても上手く使うわ。さっきのチェックメイトの決め手も、ナイトだったわね」
そう言って、エレナは白いナイトを指で小突いた。
アンヌはまあね、と答えて、
「ナイトって、他の駒を飛び越えて進むことが出来るでしょう?
だから、他の駒とは違う使い方が出来るわ。私は、その使い方が、チェスの勝敗を決めると思うの」
そう言って、アンヌはティーカップを口に運んだ。
一口飲んで、カップを下ろしたその顔には、今までの穏やかな表情はなかった。
険しさと寂しさが、混じり合った表情に変わっている。
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