すれ違う三つ

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「……エレナちゃん、貴女は間違ってるわ。 国王と王妃の死は、貴女の責任ではない。 だから、自分を責めるのはやめなさい。さもなくば、貴女は自分を見失う。 そして、再び大切なモノを失い、取り返しのつかない事態を引き起こすことになる」 凛は無表情のまま言った。 それは、凛が訪問者と向き合うときの癖で、私情を挟まないようにするためのものだった。 「そう言い聞かせても、ダメなんです。私の二つ名は“戦いの姫君”。命を捨ててでも、王国を護るべきだった……」 「エレナちゃん、やめなさい。今更悔やんだって、両陛下は戻ってこないのよ」 「分かっています。でも、責めずにいられますか!? 私があのとき、微妙な変化に気が付いて、忠告していれば……。 国王と王妃の命を護れなかった私が、何事もなかったかのように生きていくなんて、私にはできません……!」 「私は何も、お二方の死を忘れろなんて言ってるわけじゃないわ。 大切なヒトの死を忘れるなんてこと、なかなかできるものじゃない。 でも、いつまでも哀しんでいるわけにもいかないの。貴女には、やらなければならないことがあるわ。 その為に自らの命を捧げてまで契約を結び、力を手に入れたんでしょう? だったら、しっかりと哀しみを受け止めて。それさえも強さに変えて……」 「私…、力だけじゃない、心の強さが欲しい……。 その強さが、国を救うことになるのなら。 例えその強さの為に、私自身が傷ついても……」 「貴女は、手に入れはじめているわ。だってほら、」 凛は手を伸ばし、エレナの右頬に貼ってあるガーゼにそっと触れた。 .
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