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「……エレナちゃん、貴女は間違ってるわ。
国王と王妃の死は、貴女の責任ではない。
だから、自分を責めるのはやめなさい。さもなくば、貴女は自分を見失う。
そして、再び大切なモノを失い、取り返しのつかない事態を引き起こすことになる」
凛は無表情のまま言った。
それは、凛が訪問者と向き合うときの癖で、私情を挟まないようにするためのものだった。
「そう言い聞かせても、ダメなんです。私の二つ名は“戦いの姫君”。命を捨ててでも、王国を護るべきだった……」
「エレナちゃん、やめなさい。今更悔やんだって、両陛下は戻ってこないのよ」
「分かっています。でも、責めずにいられますか!?
私があのとき、微妙な変化に気が付いて、忠告していれば……。
国王と王妃の命を護れなかった私が、何事もなかったかのように生きていくなんて、私にはできません……!」
「私は何も、お二方の死を忘れろなんて言ってるわけじゃないわ。
大切なヒトの死を忘れるなんてこと、なかなかできるものじゃない。
でも、いつまでも哀しんでいるわけにもいかないの。貴女には、やらなければならないことがあるわ。
その為に自らの命を捧げてまで契約を結び、力を手に入れたんでしょう?
だったら、しっかりと哀しみを受け止めて。それさえも強さに変えて……」
「私…、力だけじゃない、心の強さが欲しい……。
その強さが、国を救うことになるのなら。
例えその強さの為に、私自身が傷ついても……」
「貴女は、手に入れはじめているわ。だってほら、」
凛は手を伸ばし、エレナの右頬に貼ってあるガーゼにそっと触れた。
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