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姉さんは先生が好き。先生も姉さんが好き。
わたしは先生が好き。
わかってる。
本当は、先生が知らないだけなんだ。
「さて、そろそろ帰ります」
わたしの家庭教師さんは、頭も良くて背も高くその上優しい素敵なお兄さんである。
わたしはそんな先生と仲良しだ。姉さんと先生が知り合いと言うのもあるが、わたしは先生の事が大好きだから。いろんな事を話してくれるし、相談にも乗ってくれる。
「えー、まだちょっと話そうよー。…先生、わたしの事嫌いなの?」
「嫌いじゃ、ないけど…」
今日は人と会う予定なんです、と言う先生を無視して、先生の手をとり、ベッドに腰をかけた。
「先生とお話するために早くお勉強終わらせたんだからねー」
わたしが微笑むと、先生も笑う。さっきの複雑そうな顔がわたしの大好きな先生の笑顔に変わった。
仕方ないですね、と呟く先生。先生は本当に優しいから大好きだ。
「ボクもなえ子さんと話すのは好きですよ」
「でしょー?ちょっとお茶でもしましょうよ!」
わたしはそう言って、机の中からお菓子を取り出した。
本当に仕方ないですね、と笑って先生もわたしの隣に腰をかけた。
「でも、もうちょっとしたら帰りますから」
「クッキーはチョコレートがいいな!」
「おや、チョコレートクッキーは1つしか残ってないですね」
先生が困ったように言う。先生はクッキーを綺麗に並べ、わたしの顔を除き込んだ。
「先生チョコ食べる?…でもわたしもチョコがいいなあ!…でも、先生にも食べて貰いたいし。先生、クッキー買ってきてよー」
「我が侭な生徒さんですね。んー、でも時間が…」
我が侭を言っても優しく笑ってくれる先生が大好きで思わずわたしも微笑んでしまう。
「でも今日は我慢する。先生にチョコあげます!…そのかわり今度はチョコレート買ってきて?」
「…分かりました。でも、なえ子さん、今度からはなかなか会えなくなるかもしれないから」
先生が複雑そうな顔をする。わたしは先生の笑顔が大好きなのに。
「そんなわけないよ。わたし先生が大好きだもん。会えるよ!絶対会えるもん!!」
「…ボクも、なえ子さんの事は好きですけど」
「本当!?」
先生が何かを言いかけたけど、それは重要じゃない。だって先生はわたしの事が好きなのだ。
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