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ゆっくり、ゆっくり、少し肌寒いけれど急いで帰る気にはなれなくて。 同じ歩調で歩くコイツも同じ気持ちなのかしら、と思った。 ぼんやりとそんなことを考えているとカイトがのんびりとした口調で言った。 「もう秋だね」 右手の人差し指の先を目で追いかけると、赤く色付き始めた楓の葉。 「そうね」 秘め事を共有するように二人で視線を交わらせて微笑む。 子供っぽい仕草をからかうように風が吹いて、その所為で葉が一枚落ちてきた。
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