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泣き虫な自分の手を引いてくれたのは、その頃唯一信頼していた親友。
「泣いてないで前見て歩きなよ」
大人からして見れば小さな親友の背中も、僕から見れば安心出来る大きな背中だった。
「だって……、僕、外国ってとこに行くんだよ? もう、会えなくなるんだよ……?」
立ち止まる。これ以上進めば、もう会えなくなってしまうような気がした。
そんな僕を振り返った親友は腰をかがめてから目線を僕に合わせる。
「大丈夫だよ。桐斗ならすぐおれの身長を追い越して、かっこいい大人になるから」
「そしたら会いに来なよ」と言って笑う親友に僕は涙を拭いながら頷く。
「会いに、行く……」
「うん、来なよ。……おれは覚えてないかもだけど」
あっさりとそう言い放つ親友。
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