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「私、体温が低いから…」
風が走った。重ねた後の肌がその色づきを失ったころ、手枕に疲れた男の所有物から独立しようとしていた。
哲学も宗教も、それらに似た恋愛も体温をあげるのに何の役にも立たない。
生ぬるい風が部屋を行き来する。男がまた戯れ始めた。
そんなことをしても、私の体温はあがらない。
私を所有したつもりの男を見上げながら、私は私を見ていた。
言葉を発するのがひどく億劫で、男の下敷きになったまま目を閉じ眠ることにした。獣のように動く男の欲望にもやはり体温はあがらず、私は浅い眠りについた。
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