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あの蒼々としていた空気の香りが
今は血の臭いになって
春の綺麗な色彩を照らす太陽は
月に隠れ
辺り一体の戦の跡を消している。
あの大好きだった丘も
朱い色に汚されているだろう。
自分も紅く染まりながら、
今にも壊れそうな背中と
いつか折れてしまうような腕に
もう動かなくなった人を抱え、
背負っていた。
今はもう血で染まってしまった、
白い肌、桃色の
綺麗な髪の女の子は
多分、最初で最後、
好きだった、女の子。
黒髪で、格好良くて、強くて、
たったさっきまで背中合わせで
一緒に戦っていた、
たった一人の親友、
もう届くことのない
憧れの背中だった。
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