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「で」
呆れたと表情で言いながら上座で腕を組んだ丈瑠は、その足下で互いに背を向けあって頬を膨らませている二人を見下ろした。大人とは思えない彼らに溜息すら吐きそうになってくる。
「今度は何が原因だ?」
そう訪ねれば二人は一斉に身体を捻り膝を丈瑠に向けた。
話を聞いてくれとばかりに輝いた目が同時に丈瑠を捕らえ、当の丈瑠は少し後ろにずり下がった。子犬のような瞳が眩しい。
そうして二人は大きな声で
「流ノ介の奴が」
「源太の奴が」
互いを指さし、言葉を被らせた。
途端にギッと睨みあい、額を突き合わせてきゃんきゃんと騒ぎ出す。
「真似すんなっ!」
「殿は私にお聞きになったんだ!」
「ンな訳ねえだろが!」
「なんだその自信は~!」
「幼馴染の!俺に決まってんだろ!」
「ッ…!殿!私ですよね!?」
幼馴染という言葉に次の反論を飲み込んだ流ノ介が、情けなく眉を下げて丈瑠を振り返った。
家臣としてしか共にいられない流ノ介にそれは禁止ワードだったようだ。
その表情にうっと詰まった源太が半歩下がると傍観していた千明がその肩にぽんと手を置く。しかし慰める気はないようだ。
「源ちゃーん?」
キロ、と軽く睨まれてたじたじする源太。その間に流ノ介は丈瑠の座る上座のすぐ下まで寄り、主人に構ってほしがる犬のようにじぃっと彼を見上げた。
そうされると弱いのだ。丈瑠は。
元々自分を一心に慕う彼が可愛くて仕方ないのだから、そんな顔をされるとつい抱き締めて撫でて甘やかしそうになる。
「との~…」
「…なんだ?流ノ介」
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