好きの音(赤青)

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案の定、千明が心配していた流ノ介はナナシ連中との戦闘中に突然意識を失った。 幸いナナシだけだったために大事に至らなかったが、他の四人はかなり動揺した。 攻撃を受けた訳ではないのだ。しかしフッと意識を飛ばした流ノ介がその場に崩れ落ちたのを見て茉子がフォローに入ることができ、誰も大した怪我は負わなかった。 「お慕いしております」 見上げた瞳は優しくて柔らか。 流ノ介は抱き寄せられながらそっと瞼を伏せた。幸せを閉じ込めるように。 そうして区切られた世界の中で、耳元の唇は紡ぐ。 「俺も――――」 動くだけで声が発されない空白の瞬間、幸せを閉じ込めた暗闇で流ノ介は諦めたように唇を噛んだ。 「――――、流ノ介」 (ああ、また、私は) 「…け、流ノ介…目が覚めたか?」 「……え…?」 「良かった。起きたか」 ボヤケた天井の板の目。 デジャヴに混乱した頭が何も理解しようとせず、流ノ介は目だけを緩慢に動かした。どうやら自室のようだ。 「貧血だそうだ。気分はどうだ?」 すぐ横から聞き慣れた声がした。 胡座を組んで座った丈瑠が血の気が引いた流ノ介の顔を覗き込んでいる。 「…と、の……」 「大丈夫か?」 「私は……?」 乾燥した喉が掠れた声を通す。 ぼんやりと滲んだ視界の中で隣に座る丈瑠が手を伸ばした。ゆっくりと目元を撫でられると少し目の前がクリアになる。 「倒れたんだ。アヤカシとの戦闘中、突然な」 言いながら丈瑠は反対の目も軽く拭った。頬に指を滑らせ未だ湿った跡を辿る。 その手の動きに流ノ介は自分が泣いていたのだと知った。 (あの、夢が、また)  
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