2/8
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
 僕だって、好きで一人でいるわけじゃない。  中学の頃は部活にも所属していて友達もそこそこ居る方だし、班行動をするときも一人悲しくクラスの余数になる事も無かった。高校に進学してからも、部活には入らなかったものの、それは変わらなかった。  僕だって、好きで一人でいるわけじゃない。  何となく空気が、雰囲気が、僕のそれとは合わないんだ。  だからこうして大した”用も”無いのにトイレの便座に腰掛けているのは、つまりそういうわけじゃない。  だからこうしてトイレで携帯をいじっているのも、つまりそういうわけじゃない。  だからこうしてトイレでSNSサイトのコミュニティを作って人を集っているのも、つまりそういうわけじゃない。  そう、ちがうんです。    僕にとってトイレというのは、個人の時間を作れる大切なスペースなのだ。特に、五つあるうちの一番奥、壁際の個室は居心地が良かった。個室の右側が壁のため、右側への配慮が必要なくなり左側のみの配慮だけでいいというのは、この上なく安心感に満たされる。高校に進学してからこの場所を数えきれないくらい使用してきた。もはや、このスペースは僕専用にしてもいいんではないか、と思えてくるぐらいだ。今現在、学校で一番好きな場所は、と聞かれたらトイレの一番奥の個室、と即答するだろう。(それはそれで看過できないような気もしなくも無い。)
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!