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レオンの意味不明な言い訳では納得できないゾスマは、とりあえず今の状況を冷静に整理してみた。
「……つまり、街で見つけた奴隷に惚れてしまい、宮廷に連れ込んだと。でも自分でも流石にまずいと気付いているから、空き部屋に隠しておいて、ヒマになったら会いに行っていたと……」
「ヒマじゃなくても会いに行っていたけどな」
「…………デメトリウス様とカストル様に報告します」
「ちょ! それは、それはやめてくれ! それが嫌だから隠してたんだって!」
「しかし流石にこれは黙認できるレベルではございませんよ。処罰されるか、それでなくとも叱られるかくらいはして下さい」
「頼むよゾスマ! 仕事増やすぞ!」
「ちゃっかり脅さないで下さい! そんな権力には屈しませんよ! 悪いのはレオン様なんですから」
「……むぅ、そういうことになるからゾスマに知られるのは嫌だったのだ。それであれだろ? 父親とかに報告したら、マリーは王宮からほうり出されるんだろ? マリーが可哀相だとは思わないのか」
「彼女は奴隷ですよ!? 王宮にいるほうがおかしいんです。それにマリーさんの主人も困ってるんじゃないですか?」
「マリーは飼い主から逃げてきたそうだ。奴隷の管理を怠る飼い主なんて、飼い主失格だよな。だからマリーは今は奴隷ではない。ただの『美しい女性』だ」
「いくら今は解放された美しい女性でも、元は奴隷なんですから王宮に入っちゃだめなんです!」
「でも、もしかしたら元奴隷の奴がもう入っているかもしれないぞ? 今いる女性使用人が元奴隷の遊女じゃないって確証でもあるのか?」
「…………元奴隷の遊女なんて、そうそういません!」
屁理屈を屁理屈で返す二人の口げんかは、もう収集がつかなっていた。
どちらも折れないから終わりもないのだ。
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