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二人の言い争いを止めたのは、一人の伝令だった。
「陛下!」
伝令の声が聞こえると、レオンとゾスマはすぐに伝令の方を向き、顔つきは陛下と重臣のそれに戻る。いままで言い争っていたなんて、そこから読み取ることはできない。
「何事だ」
「東方防衛同盟が奇襲をうけ、前線を退きました」
「なに!?」
「敵の前線を退けて油断していた所に敵の別部隊が攻撃してきたようです。しかし、レグルス様率いる我が国の軍は被害は少ないようです」
「……わかった。ご苦労」
レオンが言葉をかけると、伝令は一礼してさがって行った。
レオンはゾスマに向き直る。仕事の話をする時のレオンの顔はふざけが一切見えないため、ゾスマも自然と仕事の顔になる。
「ゾスマよ。とりあえずマリーの件は忘れろ。バルバロイは意外と手強いらしい。まぁ、手強いから東方防衛同盟なんてのを作ったんだろうがな。増援を送れるか?」
「はぁ。しかし、我が国がそんなに力を注がなくてもいい気がしますが……」
「いや、もし今バルバロイを止めないでバルバロイに他の国が落とされたら、我が国まで来られたときに我が国だけでは対抗できない。今のうちに連合軍という『最高戦力』で抑えていたほうがいいのだ」
「ですが、それでも押されているのですよね。増援を送るにも、我が国にも最低限の戦力は残さないといけないため、残っている戦力はもう、ありません」
ゾスマが困ったように言葉を返すと、むぅ、と言ってレオンは腕をくみ、下を向いて考えだした。そして少しして顔を上げたレオンの顔は、……にやけていた。笑いを堪えているようにも見える。仕事の顔じゃなくなったレオンを見て、ゾスマに嫌な予感がよぎる。
ゾスマの嫌な予感は、……大低当たるのだ。
「ふむぅ、他に戦力がないなら仕方ないな。……私が行こう」
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