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「はっ!? だめです!」
「国の有事だ! 私が行かないとレグルス部隊が危ないというのなら、喜んで私もこの重い腰をあげよう!」
「どの腰が重いんですか!」
「準備をしろゾスマ! バルバロイと戦争だ! 急ぎで行くゆえ兵は小数でかまわん!」
「だめです陛下! 自ら戦地に赴くなど!」
「ゾスマよ、覚えておけ! ミラは戦わぬものに微笑むことなど決してないのだ! それ即ち、アルカディアの終わりに等しいぞ!」
そのままレオンは走り出してしまった。
が、ゾスマは動けなかった。
ゾスマの心にはレオンの言葉が離れずに反響していたからだ。
『戦わぬ者にミラは微笑まない』
実際、レオンが動けば戦況は良い方向に行くだろう。一国の王が行くとなれば指揮もあがる。危険を覚悟で行く意味は、確実にあるのだ。本当は止めなければならない立場のゾスマも、レオンの言葉に惹きつけられ、レオンの判断に逆らおうと思えなくなった。
「……仕方ありませんな。わかりました。すぐに兵を集めます!」
そう言ったゾスマの顔は、冴え渡るように良い表情をしていた。結局、ゾスマもレオンに振り回されるのを楽しんでいるのかもしれない。本人に自覚は全くないのだろうが。
王宮の戦士達は、行動することを惜しまない。
「はっはっはー! 戦だ!」
レオンの楽しそうな声が王宮に響いた。
それが、この王宮の日常なのだ。
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