プロローグ2 弓に愛された男

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「弓兵は急いで配置につけ! 合図があるまでは撃つのではないぞ! バルバロイを城内に入れるわけにはいかぬ!」 アナトリアの城。 すでにバルバロイの進行により、アナトリアより東の地域は全て侵略されている。 つまり、アナトリアの城が次にバルバロイが攻めてくる場所であり、東方防衛同盟の拠点であり、戦闘の最前線である。 その城壁の上。 弓兵の配置場所。 すでに大量の兵士が配置につき、弓を手に構えている。遅れてきた少量の兵士は怒鳴られながら走って配置についている。 城壁の上から戦況を見ていた指揮官が、一人の男に命令をだす。 「よし、オリオン! 頼むぞ!」 そう言われると、一人の男が立ち上がった。 長い金髪を三つ編みでまとめた、筋肉の引き締まった美青年。 左手に弓を、右手に矢を持って、髪を風になびかせている。 「任せて下さいよ」 オリオンと呼ばれた青年は、そう言うと、城壁の縁に片足を掛ける。そしてそのまま下を覗く。 かなりの高さがあり、少し足を踏み外すだけで死は免れないような場所でもオリオンは恐れることはない。 そしてそのまま弓を引き絞り、狙いを定め、矢を放った。 放たれた矢は風を切って進み、今まさに連合軍に斬り掛かろうとしていたアマゾンの心臓を射ぬいた。 五十メートル以上ある距離。 上空を吹く強風。 動く的。 それを全く感じさせないような鮮やかな軌跡で、オリオンの放った矢はアマゾンに吸い込まれたのだった。  
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