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「はっ、レグルス率いるアナトリア増援部隊がバルバロイの前線を退け、敵の進行を一時食い止めたようです」
「なんだ、そんなことか」
するとレオンは急に興味をなくしたかのようにがっかりとした表情になる。
まるでお菓子をお預けされた子供のようだ。
「そんなに急いでいるから、てっきりバルバロイがここまで攻めてきたのかと思ったぞ。それなら私の腕も奮えたのに」
「レオン様。そのようなことは口にするものではございませぬ。せっかく勝っているのですから」
「だが、それでは私がつまらん」
そういうとレオンは両手を広げ、まるで舞台の一コマであるかのように高らかに、用意してあったかのようなセリフを語る。
「私は退屈だぞ。戦もなく、平和な世の中が。確かに私は民の平和が欲しい。そう! 陛下として!」
歳も態度も、一国の長には見えないのだが、実際に国王なこの人、レオンティウスは語り続ける。
「だが、民の平和を手にするためには戦が必要だ。攻めてくる敵を撃退する戦。我が国に仇なす敵を駆逐する戦。そして領土を広げるための戦。全ては民のため、平和のためだ! 平和を手にするために争いが起こるという矛盾。私はすでにそれを受け入れたぞ!勝てば安寧。負ければ荒廃。それが全てだ! 私が戦に参加することで勝率が少しでも上がるなら、私は喜んでこの身を戦に捧げよう! そう、平和のために!」
高らかと言い終えたレオンは満足気な顔。ゾスマはそのレオンに届かないような小声で言い放つ。
「もうそれは何度も聞きましたよ」
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