62人が本棚に入れています
本棚に追加
「レオン様が言いたいことはよくわかりました」
レオンの演説を聞いたゾスマは、本来の自分が言いたかったことをやっと話しだす。
「ですが、あなたは国王の身なのですぞ!? こうやってフラフラと一人で歩き回られるのも遠慮していただきたいのです。いつ暗殺者の剣があなたを貫くかわからないのですぞ?」
そう、ゾスマが焦ってレオンを探していた訳は、レオンの身に何かあったのではと思ったからである。
「レオン様が国王に即位してから二年。いいかげん昔のように振る舞うのはやめて下さい。でかける時は従者をつける。移動する時は一言残す。それくらいできましょう?」
「ああ、わかったわかった」
「アルカディアの頂点に存在する者として、身なりにも、言葉にも、行動にも、全てに気品と品格を持たななければいけないのです。だれからも敬われ、この人にならついて行けると思わせなければいけないのてす。もう少し意識というものを……」
「……もうわかったと言っているだろう!」
レオンが怒鳴り気味に言う。覇気のようなものを感じるくらい迫力のある声だが、ゾスマはそれくらいではひるむ様子はない。
「そうやってすぐに怒鳴るのも直していただきたい」
「ゾスマよ。お前はいつから私の説教役になったんだ? 教育係ならカストルの奴がすでにいるだろうが」
「私は二年前より責任感が生まれてますからね。国を思えば誰でもこうなります」
「お、俺だって国を思っている。だから戦を……」
「殿下、『俺』ではなく『私』では?」
「ぬっ……」
「私もちゃんと立場上、あなたに『様』をつけているんですから、レオン様もそれくらいは守ってくださらないと」
「……じゃあお前はもっと私を敬うべきじゃないのか?」
「十分敬ってます。だからちゃんと『敬語』を使ってるじゃないですか」
ふふん、とゾスマは鼻をならす。
最初のコメントを投稿しよう!