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レオンは扉をゆっくり閉める。
パタンという小さな音とがすると、間髪入れずにゾスマがレオンに問いただす。
「レオン様! 彼女は何者ですか! ちゃんと説明してもらいますぞ!」
「わかった。わかっている。説明するさ、包み隠さずな」
するとレオンは廊下を歩きだした。部屋から遠ざかりたいのだろうか。ゾスマも素直についていく。歩きながらレオンは語る。
「そう、あれは一週間ほど前だったか。私は王宮を抜け出して市街地を散歩していたんだ」
「……どうして皇帝が市街地を散歩などしているのですか! 第一どうやってこの宮廷を抜け出したんですか!」
「あーもう、うるさいな。話が続かないだろ。そこは今はスルーしろよ、固いなぁ」
煩わしそうにレオンは首を振る。レオンが悪いことをしているのに、なぜかレオンの方が優位に立っている。そんな状況にゾスマは不満を持ったが、話が進まないので黙っている。
「それでな、私が街を歩いていると、ふいに路地裏のほうから人の啜り泣く声が聞こえたんだよ。ひくっ、ひくってな」
「路地裏なんて危険な所にあなたは……」
「まあまあ。それで私は何事かと思ってな、近寄ったんだ。そしたら、そこにいたのは……服装でわかったよ。奴隷だった」
奴隷。
人だが人として扱われない人達だ。この時代では奴隷がいるのが常識であり、人口の四分の一以上が奴隷だった。戦争の捕虜、罪を犯した者、資産のなくなった者などが奴隷になる。
そして奴隷はだれからも蔑まれる存在である。
特に身分の高い者ほど奴隷を人と扱わうことはない。同情の念を持つことすらないのだ。
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