序.貧乏神

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「ちょっ待てよ!」 聞き覚えがあるような無いようなフレーズと共に二人が追いかけてくる。 「こら、あんまなめとっと………うがっ!!」 振り向いてみると二人の男のうち1人が道路の真ん中にうつ伏せで倒れていた。 「だ、誰だこんなとこにバナナの皮捨てたやつ………ってぎゃああああ」 ザッツ古典。もはやその現象は国宝級とも言えよう。 そして男の絶叫の原因となったモノを見てほくそえむ。 「誰だぁぁぁあ!!!こんな道路のど真ん中でゲロ吐いたやつはぁぁぁ!!!」 転んだ男の着地地点には誰が産みの親なのか、たっぷりの吐瀉物。 ちなみにそのゲロまみれになったのは茶髪ケツパン。 もう1人のヤクザ風味出っ歯は隣であたふたしていたかと思うと突然狼狽え始めた。 「あれ、財布………あれ、家の鍵………? 落とした!!?」 次の瞬間出っ歯は顔を真っ青にして来た道を大急ぎで戻っていった。ゲロまみれの相方をおいて。 残念ながら君の財布と鍵は運悪く排溝の中。見つけられるかな? ゲロまみれの方はもはや呆然と魂を抜かれたような表情をしている。 うんうん。実にサッパリ。 随分と『不幸』な目にあったな彼らも。 ―――『貧乏神』である俺にちょっかい出したのが運の尽きってか。 俺は満足感に浸りながら、いつのまにかすっかり暗くなった道を歩んで行く。街のネオンが暗闇の中、一層と際立っていた。 序.貧乏神
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