【紫陽花】

2/2
前へ
/92ページ
次へ
残り香だけたよりに   過ぎ日想えば   僕は弱く   枯れるまで只泣きました       帰る場所は違うけど   傘は一つしかなくて   僕は濡れたくないから   さよならしました       紫陽花の花が咲くこの道の   角を曲がったら   君の部屋まで   僅かな距離   距離が今は遠く       少し伸びた   睫毛にかかる前髪も   かきあげる手   爪を彩る紫も       僕の知らない君を   一つ見つける度に   一年という月日を   只、悔やみました       再会の朝に見たそれぞれの   暮らし 背負うもの   上手く笑えない   僕は僕と   後悔の渦へ       「またね。」と手を振って振り返る   薬指には   日焼けの痕   優しい嘘は   最初で   最後の       紫陽花の花が咲くこの道の   角を曲がったら   君の部屋まで   僅かな距離   距離が今は遠く
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加