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事後に女はこうも云った。
「もし、貴方が里へ無事ご帰還なさった時は
私は同じ此の場所で真っ赤な着物でお迎え致しましょう。
私は決して貴方の死を望んでいるわけではありません。
どうぞ、ご自愛も忘れないで。」
男から聞いた話は大体こんな感じ。
「犯罪性が在る」と彼に云えば、きっと他にも遊郭の名前やら場所やら、女郎の詳しい特徴まで訊く事が出来ただろうが・・・。
そこはまぁ仕方がない。
とにかく調べるしかない。
話には本当にどう考えても腑に落ちないところばかりだ。
男の事情を知った上で女を宛った辺りもそうである。
金と性処理と言う利害の一致。
その上での契りは、脆く、そして扱い易い。
逆にお互い干渉しない事が唯一の固い条件で有ると言っても良い。そういうのが俺みたいな奴には丁度良いから行くのだ。
まぁ稀に勘違いして、愛だのなんだの言って逃げた挙げ句・・・・って奴もいるが。
こんなこと本当に自慢にもならないが、当時在った元服制度の儀式を終わらせたか否だったか。
それくらいから既に遊郭には結構お世話になっている。其れなりに内情には詳しいつもりで居たが・・・。
「喪服の遊女・・・ねぇ・・・」
ポツリと呟く。
自分の中の記憶や経験上にまったく浮かばない存在。
気にならない筈がない。
女の人間性なんかは大体予想が付くし
(大方、金で買われて無理矢理そんなコトを強いられているか。若しくは、まさに自ら其れを望む様な自己犠牲精神の塊みたいな女か。はたまた只の馬鹿なのか。)
他人の素性なんか全く持って興味が湧かない。むしろ趣味の悪さに退いてしまう程。
只どうしても「オカシイ」と思ってしまった気持ちが消化されなかった。
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