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そこは、ちょうど十字架が建っている辺りの真下にあたる場所だった。
一見ただの突き当たりの様だが、そこには隠し扉になっているようだった。
扉を開けると、奥の方から赤子の泣き声が聞こえた。
近付くと、そこには小さな赤子が顔を真っ赤に染めて元気良く泣いていた。
「これが……零子の生まれ変わりの赤ちゃん……」
裕美がそっと抱き上げると、ピタリと泣き止み、裕美の顔の方へ両手を突き出した。
「気に入ったみたいですね。
その子に名前を付けてあげて下さい」
「私が……?」
「ええ、これからは私達がこの子の親代わりをするのですから」
「私達が……」
一時の沈黙の後、決心が付いたかの様に、そっと子供の顔を撫でながら裕美は言った。
「この子は零子の忘れ形見……だからこの子の名前は零二……どうかしら?」
裕美は微笑みながら赤子に尋ねると、その子は万遍の笑みを浮かべた。
「気に入ったみたいですね」
「これからよろしくね、零二」
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