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――今から話す事は言い伝えの様に母から聞かされてた話なんだけど……。
私のお祖母様達がまだ幼い頃の話しらしいんだ――
その頃、風使いの一族はかなりの人口だったらしく、幾つかの集落に分かれてそれぞれ暮らしていたそうだ。
そんなある日、一つの集落に事件が起きた。一夜にしてその集落が消えてしまったらしいのだ。
原因を突き止めようと生き残りを探したが一人として見付からず、集落の長達を集めて情報収集しようとしたが、数日経っても手掛かりすら掴めず困り果ててしまった。
そんな矢先、生き残りだという一人の青年が現れた。深傷を負っていたため、必死に看病しながら情報を聞き出そうとしたが、青年は傷が治るまで一言も話さなかったそうだ。
その上、全快するとその青年は突然姿を消してしまったのだ。
慌てて皆で周辺をくまなく捜索したが見つからず、また手掛かりが無くなってしまった。
だが、その翌日からまた次々と事件が起き始めた。
奇怪に思った一人の集長が、事件の起こった集落の生き残りを再び捜索したがやはり見付からなかった。そこで一族でも指折りの力を持つ者達を集め密偵団を作り、原因究明の為に動き出した。
数日が過ぎ、一族でも凄腕達の集まりであったはずの密偵達が、見るも無惨な姿になって戻ってきた。 数人は辿り着いたものの目覚めることなく死んでしまい、数人は行方不明で生死さえ分からず、そして生き延びた人々は半狂乱になってしまっていた。その中に、一番の使い手だった私の曾祖父だけがなんとか正気を保っていた。
その話によれば、突如裏切者と思われる男が現れ、その男の言うことに従わない者達は次々に始末されて、生き延びた者達は何処かへと連れ去られていたのだったという。その男は自分は『風魔士』と名乗っていたそうだ。
そうして着実に彼等は人数を増やし、それと共に我ら一族達は仲間を失う恐怖心と、仲間を殺された復讐心とを増幅させていった。
やがて我ら一族は集結し討伐と言う名の敵討ちを決意し、決闘する事になった。
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