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決戦当日、一族達は信じ難い光景を目の当たりにする事になった。想像していた通り、そこには密偵として送った行方不明の者達を含め、同じ一族だった者達が相対していた。その中心には、あの看病していた青年の姿があったのだった。
青年は苦笑した後、一言吐き捨てた。
「わざわざそちらから戦いを挑んで来るとは、何とも愚かな者達だろうか」
「愚かなのはどちらだ!
この……裏切り者めが!」
長老の言葉に相手方に就いた者達がざわめいた。その瞳は光を失い、まるで操られているかの様に虚ろだったという。
男は高笑いをし、片手を高々と上げるとある場所を指差した。その先に目をやると、そこには子供達が大きな鳥籠の中に閉じ込められているのが見えた。
「何とも卑劣な……子共達を人質に仲間にしていたのか……」
「子供達は宝ですよ。後々我等の力を広げてくれる大切な駒ですからね」
その言葉にどよめきがわきあがった。子供を駒扱いする男に対しての怒りが頂点に達したのだった。
「貴様だけは許しがたい! 死して罪を償うがよい!」
そして戦いは始まった。しかしこの決闘は想像以上に残酷なものだった。
双方がお互いの弱点を知り尽くしていたために、単なる殺し合いの様になっていった。その上、お互い寝食すら許さず、戦いは三日三晩続いたそうだ。
そうして最終的に生き残ったのは一族は長老と巫女を除いた精鋭五人、相手はあの青年のみとなってしまった。
長老は、最後の慈悲を見せ戦いを終わらせようとした。
「お前の強さは認めよう。どうだ? 悔い改めて、我等と共にまた平和な集落を築いて行こうではないか?」
だが、青年はその慈悲をはねのけ叫んだ。
「集落だと!? 笑わせるな! 我は帝国を創るための駒を集めていたに過ぎないのだ!」
七人の目に、その姿はとてつもなく邪悪なモノに映ったそうだ。
男は嘲笑し、何やらか呪文を唱え始めた。反射的に五人は身構えたが、同時に男は術を発動させた。
その術は禁術として封印されていたものだった。五人は防ぎようもなく術に捕らわれてしまった。
それを見た巫女は、唯一その術を封じたと言う剣と言霊を思いだした。男が油断している隙にその剣を召喚し、言霊を用いて術をはね除けた。
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