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見ると、図書館の奥には、噂に聞いた通り、幾つかの書物が、無造作に放られてあるが、火の光の及ぶ範囲が、思ったより狭いので、数は幾つともわからない。ただ、おぼろげながら、知れるのは、その中に辞典類と、魔導書があるという事である。勿論、中には普通の読み物もまじっているらしい。そうして、その書物は皆、それが、かつて、本棚に収まっていたと云う事実さえ疑われるほど、糸の切れた操り人形のように、口を開いたり表紙を延ばしたりして、ごろごろ床の上にころがっていた。しかも、帯やら小口やらの表立っている部分に、ぼんやりした火の光をうけて、低くなっている部分の影を一層暗くしながら、湿気によって痛んでいた。
アリスは、それら本の腐爛したような湿気臭に思わず、鼻を掩った。しかし、その手は、次の瞬間には、もう鼻を掩う事を忘れていた。ある強い感情が、ほとんどことごとくこの人形遣いの嗅覚を奪ってしまったからだ。
アリスの眼は、その時、はじめてその書物の中に蹲っている人間を見た。黒白の服を着て、三角帽子をかぶった、金髪頭の、普通の魔法使い、魔理沙である。魔理沙は、右の手に火をともしたランプを持って、その書物の一つの中身を覗きこむように眺めていた。古ぼけた紙を使っている所を見ると、多分魔導書の類であろう。
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