第1話 目覚め

2/13
前へ
/16ページ
次へ
 微かな海の香り、無限に広がる空、天頂の暖かい太陽。草の優しい、自然な香もする。  優しくて、穏やかで、大自然の愛にだけ包まれている場所。  その上に寝転んでいた黒い少年は、長い夢に寝ぼけたかの様にフラフラと起き上がった。 「……何故、此処にいる。何故、此処に在る」  彼の虚ろな視界はただ、広がる青と緑を捉えていた。  美しいという感情はそんなに浮かんでこない。  それよりも脳内は自己に対する疑問ばかりで支配されているのだ。 「何故──」  そうだ、とふと少年は思い出す。  全てではないが、その記憶の欠片が脳内に転がり込んできた。 「俺は……死んだ?」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加