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ハッキリとしたそのイメージは浮かばない。だが確かに自分は死んだ。
土砂降りの雨の中、彼は死んだ。誰かに殺された。
覚えているのは後もう一つ、その誰かは自分にとって憎悪の対象になるような人物ではなかったことだ。
「……ん?」
心の整理が一段落済み、少年の目が黒い光を取り戻した。本来の彼の瞳の色だ。
すると、その瞬間まで自分の記憶がないことにのみ働いていた脳が、周りにいる人々の存在を認識する。
皆、先程の彼と同じ様に呆然と己の記憶を辿っている様だ。
「……記憶」
その内の一人、少女がボソッと呟いた。
しんと静まる辺り。次いで少年が皆に聞こえる様に大きめの声で言う。
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