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突き抜けそうな晴天だった。 眠りを誘うような春のあたたかさは日に日になくなり、代わりに太陽が自分が主役だと告げるかのようにじりじりとアスファルトを焦がす。 五月の終わりだというのに、陽射しは夏を告げるかのように強い。 改札を抜けてアスファルトを踏めば、正午を少しだけ過ぎた太陽が眩しくて忍は目を眇めた。 シャツの上に羽織ったカーディガンは失敗だったかもしれない。 手に持った定期入れを斜め掛けしたバッグのなかに放り込み、腕時計を確認すれば待ち合わせ時間にちょうど五分前だった。 土曜の昼ということもあってひとが多い。乗って来た電車も朝の通学通勤ラッシュに比べればいくらかマシという程度で、座ることも出来ないまま着いた駅はやはり多くの利用客がいた。 駅の日陰から一歩踏み出して、暑さのあまりカーディガンの袖を捲くりながら辺りを見渡せば探していた人物をすぐに見付けることが出来た。 「正宗さん!」 駅前の待ち合わせのメッカである噴水広場にもたくさんのひとがおり、一様に待ち合わせやナンパといったひとたちで溢れていたが、百九十センチというひとごみでも抜きん出た長身のお陰で彼を見つけることは容易だ。加えて、陽の光を受けて煌めくような金髪は目に眩しさすら与えるようで、ふわふわと逆毛立てた髪が揺らめくのはやわらかそうに感じる。 名を呼ばれ、声のほうへ振り向いた正宗はふわりと笑みを浮かべ手を挙げた。 思わず走り寄った忍は、自分の頬が暑さではない何かによって熱くなってゆくのを感じ、それをごまかすかのようにぱたぱたと手で扇いで見せる。強い陽射しのお陰でもあるのだろう、その動作をさして不思議にも思わなかった正宗は、太陽光の眩しさに目を眇める忍の顔に手を翳し陰を作ってやりながら申し訳なさそうに眉を下げ笑った。 「もうちょっと遅い時間でもよかったねぇ。どっか休もうか?」 「大丈夫。……暑いですね、今日」 さりげなく忍の腕を引き日陰へと誘導した正宗が、駅前に構えるカフェを横目で見ながら問いかけてくるのに忍はやんわりと首を振って答えたが、結局正宗がひと息つきたいと言うのに誘われるまま店内へと足を踏み入れていた。 程よく空調が効いていて居心地がいいカフェは、全国展開しているチェーン店で学生や若い男女に人気があったが、昼食時ということもあって意外にも客は少ないようだった。 .
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