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誰もが寝静まった夜の中。
今夜は月明かりも雲に覆われてしまっていて、唯一石畳の通りを照らしてくれているのは点々と等間隔に設置された街灯くらいだった。
首都からそれほど離れていない街だから、それなりに人は多いが、発展途上という段階にある街では、夜中はまったくといっていいほど騒ぎが起きない。
だが、ここ数日は違っていた。
無差別に幅広い層の住民が残虐に殺されてしまっているのだ。
それがどういった目的を持っているのかは分からないが、聞かなくても分かりきっているようなものだ。
殺される夜には必ず男の盛大な笑い声が夜の街に響き渡るからだ。
まったく慎重に殺そうとなどしておらず、むしろ警備隊に自分の存在をアピールするかのような舐めきった態度をしているにも関わらず、ずっと逃がし続けている。
その理由は非常に単純なもの。
「あぁぁあぁぁ!!!」
説明している内にも、今晩も犯人を捕まえるために赴いた警備隊の一人が犠牲者の一人となってしまった。
制服に身を包んだ若い男性が元の原型を残すこともなく潰された空き缶のように圧縮されて鮮血の水溜まりの中に伏していた。
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