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「なぁ」
浜辺で抱き締め合いただただ海を眺めるだけの時間が過ぎおもむろにゾロが口を開いた。
「ルズィの花って?」
どうやら先程の消えた花が気になるらしく花に触れた指先を見つめゾロが尋ねてみた。
するとミホークは瞳を細め耳元に唇を寄せ
「ルズィの花。別名気まぐれ花。種を生き物と過ごさせ海へと放り込む事により開花する珍しい花だ。花の色や形、匂いは生き物と過ごした経験により異なり同じ花は咲くことがなく、花が咲いた後生き物に触れると消えてしまう。」
優しくまるで絵本でも読み聞かせる母親のようにミホークはゾロへ説明をする。
その説明に何かを思い出したようにゾロは暗い闇へと姿を変えた海へと視線を向けた。
「……。」
小さく小さく何かを悲しむようなそれでいて何事もないかのようにゾロは瞳を伏せる。
だがそれを見抜けない男ではなかった。
「………何か思い出したのか?」
「……………、昔、あった奴がさっきの花好きだとか言ってたから。」
優しいミホークの促しにモジモジとした後ゾロは唇を開いた。
「死んだら………海へルズィの花をとか言ってたから縁起悪ぃ」
たかが花一輪で何を動揺しているのだろうかとゾロは自嘲の笑みを浮かべる。
ミホークはそっとゾロを抱き上げると海を背に歩きだした。
「いっ、い、いきなりだなっ」
「………少し冷えてきたからな」
まさか抱き上げられると思っていなかったゾロは真っ赤になり狼狽えたがミホークは気にせず町へと戻りだした。
優しき剣士から海が見えないように。
大剣豪の背の海にルズィの花畑が遠くで広がっていた。
それは誰かを葬る様に
ルズィの花畑は月明かりを浴び艶やかに光り輝いていた。
END
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