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「・・・何さ、見られたら困るような女でもいるわけ?」
剥がされた腕が行き場を失い、悲しそうに下げられると、春香は一馬を睨みつける。
だが、一馬は春香の嫌みを気に留めることなく、肩をすくめてため息を吐いた。
春香は不服そうに眉を寄せ、ギュッと手を握りしめる。
この一馬の無関心な態度が、春香には不満でならなかった。
高校一年の春、一馬を一目見たその時から、自分は一馬への好意を隠すことなくぶつけてきたというのに・・・。
一馬は、いつだって何も応えてはくれなかった。
春香は小さくため息をつくと、顔にかかった長い髪を耳にかける。
もう二年もこの調子なのだ。
それに対して腹をたてることにも、春香は疲れ始めていた。
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