432人が本棚に入れています
本棚に追加
一馬は教室に滑り込むなり、自分の机に縋るように突っ伏して、肩で息をしていた。
「朝メシが・・・逆流してきそうだ・・・」
教室中がパニックになりそうなことを息も絶え絶えに呟きながら、一馬はとにかく呼吸を整えることに集中していた。
すると、自分の前の席に誰かが座った気配がして、腕に埋めていた顔を少しだけ上げてみて、すぐまた戻した。
そこには、見慣れた友人の憎らしい笑みがあった。
「シカトかいっ」
一馬の友人、西武俊(ニシタケトシ)は、おかしそうに笑いながらそう言った。
一馬は顔を伏せていても相手に聞こえるくらい、大きく舌打ちする。
「・・・吐き気が増した」
「なぁにぃ?カズちゃん、お疲れね~ん?」
やたら粘っこい女言葉を口走り、西が一馬にしなだれかかると、一馬はそれを払いのけるようにガバッと飛び起きた。
「や~んっ!! カズちゃんのいけずぅ~」
「殴るぞ」
「ウソ、ゴメン、ジョーダン」
西が胸倉を掴まれてやっと、ふたりは正面から向き合った。
両の手の平を下にくいっくいっと動かして、西は手を離すように一馬に訴える。
一馬はもう一度舌打ちをしてから、渋々西を解放した。
最初のコメントを投稿しよう!