佐伯一馬 窓口

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  一馬は教室に滑り込むなり、自分の机に縋るように突っ伏して、肩で息をしていた。 「朝メシが・・・逆流してきそうだ・・・」 教室中がパニックになりそうなことを息も絶え絶えに呟きながら、一馬はとにかく呼吸を整えることに集中していた。 すると、自分の前の席に誰かが座った気配がして、腕に埋めていた顔を少しだけ上げてみて、すぐまた戻した。 そこには、見慣れた友人の憎らしい笑みがあった。 「シカトかいっ」 一馬の友人、西武俊(ニシタケトシ)は、おかしそうに笑いながらそう言った。 一馬は顔を伏せていても相手に聞こえるくらい、大きく舌打ちする。 「・・・吐き気が増した」 「なぁにぃ?カズちゃん、お疲れね~ん?」 やたら粘っこい女言葉を口走り、西が一馬にしなだれかかると、一馬はそれを払いのけるようにガバッと飛び起きた。 「や~んっ!! カズちゃんのいけずぅ~」 「殴るぞ」 「ウソ、ゴメン、ジョーダン」 西が胸倉を掴まれてやっと、ふたりは正面から向き合った。 両の手の平を下にくいっくいっと動かして、西は手を離すように一馬に訴える。 一馬はもう一度舌打ちをしてから、渋々西を解放した。  
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