佐伯一馬 窓口

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  「いい上りっぷりだったな、階段」 「・・・見てたのか」 「すれ違ったってのにこれだもんな!! 俺泣いちゃいそ」 目元を押さえてオーバーに泣くマネをする西に、一馬は苦笑を浮かべた。 「わりぃ、気付かなかった」 「ヒドイ!! アタシとのことは遊びだったのね!?」 「へぇへぇ」 適当にボケをあしらわれたことを気にすることなく、西は急に真顔になって一馬に顔を寄せてきた。 「で、今朝は誰から逃げてきた?」   「誰、って・・・」 「里沙ちゃん?さゆりちゃん?あっ!先週告られた瑞紀ちゃんか!!」 西は思い付く限りの名前を、頭にはしっかりと顔も浮かべながら並べたてていく。 この西武俊という男、“あの”佐伯一馬の親友という立場からいろいろな方面から相談を持ち掛けられるらしく、一馬の周囲の女の子事情にはやたらと詳しかった。 西の握る情報の中には一馬自身でさえ知らないものも多く、さながら秘密工作員のようだ。 そんな状況を、元の性格もあって西は非常に面白がっているらしく、最近では自らのことを「佐伯一馬窓口」と自称している。    
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