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拳の痛みがようやく落ち着くと、一馬は父親に対する悪態を絶やすことなく、再び学校への道を歩きはじめた。
人生がかかった嫁探しが始まったとはいえ、さすがに学校を休む訳にはいかない。
ただでさえ、進路のことで頭を悩ませているというのに、更にもっと頭の痛い問題を抱えてしまい、一馬の足取りはどことなくフラフラと危なっかしい。
「・・・結婚ねぇ・・・」
元来、一馬に結婚願望は無かった。
18歳なんて若さならば、当然とも言えるだろう。
美しかった母に似た一馬は、クッキリとした二重の目に高い鼻、180cm近い長身、普通はコンプレックスになりえるクセのある黒髪が、憎らしいほど様になるという、誰もが妬む・・・いやいや、誰もが認める美形だった。
それ故、当然と言うべきかは定かではないが、かなりモテる方である。
顔も知らない後輩から突然告白されたり、帰り道にヨソの学校の生徒に待ち伏せされたりすることも、珍しいことではなかった。
生来の人の良さから、好意を寄せてくる相手を強くつっぱねることもできず、その携帯には多くの女の子のアドレスが登録されてはいるが、特別決まった相手はおらず、現在一馬に『彼女』と呼べる人はいない。
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