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俺は結婚した。
三年前、親父が死ぬ前の日に、孫の顔が見たいって言ってたよな?
産まれたんだ。
男の子だ。目元がなんだか親父に似てる。
ただ、性格はあまり似てほしくないってのが本音だ。
その子を連れて、俺は今日。親父と母ちゃんが眠る墓に、妻と三人で来ていた。
そして、墓の前で孫を抱きながら
「遅くなってごめんな。親父」
そう言った。
それから一時間。
まだ赤ん坊の息子は妻に任せて、俺はきっかり一時間墓の前に立っていた。
ずっと解らなかったが、話しをしてんたんだと思う。
親父は母ちゃんと。
俺は今、親父と話している。無口なのは相変わらずだな……
そう考えてみると、思わず苦笑が零れた。
息子の名前や、妻のこと。仕事の愚痴とか、とにかく心の中で一方的に親父に話しかけてた。
そして、一時間経つと、俺は親父と母ちゃんが眠る墓に頭を下げて
「ありがとう」
そう言ったのだった。
なんだか、少し強く吹いた風が、俺の頭をわさわさと撫でた様な気がした。
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