流離人

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 ここは、たぶん地球のどこか。構造体は果てなく続いている。  方位など無く歩ける場所に足を掛け、手で掴める箇所を登り、階段を下り当てもなく進んでいく。  遠い昔に読んだ本の中に、 『山々は雄々しく、大地は揺るぎなく、風は草原を優しく撫で、大海は芥を選ばず、星は輝く――』  そう記してあった。  『山』とは? 『大地』『草原』『大海』『星』すべて知らない。  『風が優しく』とはどういう意味なのだろう。  他の本に書かれ特に気になった文章が一つあった。  『真の【光】とは視覚神経を刺激して明るさを知覚させるものではない。  心に秘め己を導く希望を指すのだ』  この言葉が不思議にストンと胸に落ちてきた。  光。  私にとっての光――希望とは何なのだろうか。
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