父のプレゼント

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 父から手渡されたのは一台の携帯電話。テレビで見たそのフォルムと、タッチパネル式というファッショナブルな点に一目ぼれして、ずっと欲しいといい続けていたものだった。父がそれを覚えていてくれたということがやや気恥ずかしかったが、それより僕はようやく手に入れたオモチャが嬉しくて、礼もそこそこに自室へと飛び込んだ。  電源を入れてタッチパネルが起動すると、そこには小さいながらもパソコンさながらの世界が広がっていた。携帯電話でもパソコンでも、いつもならかちかちと安っぽいプラスチックのボタンを押す音が邪魔だったが、今日からはそんな雑音に煩わされることもない。動画も、ゲームもスピーカーから流れる音だけが楽しめる。僕はほんの数インチの画面に吸い込まれていくような、不思議な高揚感に包まれながら操作に没頭していった。  しかしだ。 「あつっ……! あれ?」  端末を支えていた小指に熱さを感じて手を開いた途端、その画面が暗転した。僕は慌ててあちこちを触ってみるが、当の端末はうんともすんとも言わない。ただひたすら熱い。  小さいもんな、とうなだれて僕はアイスノンを取りにキッチンへ向かった。
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