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「しんじらんない」
返した返事と、同じ言葉が胸の中に寄せる。
ずっと好きだった人が隣にいて、そして耳元で甘く囁く自分がいる。
ただ酔った勢いなんかじゃないから、どうしても好きと伝えたくて、もう自分の気持から逃げないと決めていた。
だから自分から捕まえようとしたのに、いつの間にか捕まっていた。
あんなに悩んで、勇気を振り絞って誘ったのに、そんな事が馬鹿馬鹿しくなる位、簡単に「好き」なんていうから、嬉しい筈なのに不安になる。
「どうした?」
俺の不安な気持が伝わったのか、一哉の目が開き尋ねてくる。
「……別に」
消え入りそうな声で誤魔化そうとしたが、ふいに涙が溢れそうになりうつむく。
俺と違って、つい昨日好きだと言う気持に気が付いた奴なんて……それなのに、こんなにも今が幸せだと思うなんて。
今にも泣き出しそうに震える俺を一哉は何も言わずに抱き締める。
ふとあげた視線と除きこんできた奴の視線が交差する。
とても心配そうな視線が俺を見つめていた。
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