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「一哉?」
なんとか意識を取り戻した雅樹の声に振り返る。
「やっと、目ぇ覚めたか、お姫様」
「なっ……誰がおひめ……」
一哉の台詞に反論しかけた雅樹の目が見開かれる。
目の前まで一哉の顔が近付いたかと思うと、そのまま口付けられてしまう。
「…うっ……ん…」
突然のキスに驚きつつも、雅樹はそのまま一哉に体を預けた。
一哉は自分の腕の中で力を無くす雅樹をゆっくりと優しく抱き締めた。
「一哉ぁ~……ほんものぉ~?」
まだ酒が残っているのか、無防備に甘えたまま雅樹が検討違いな事を尋ねる。
「本物さ」
そう言って、もう一度今度は軽く唇を合わせる。
酔っ払い相手に自分は何をしているんだと自問しながら……。
「好きぃ~ずっと一哉が好きだった……逢いたくてたまらなかった」
ぎゅっと抱きついたまま、そう泣きそうな声で言葉を綴る雅樹に、あぁ、俺もコイツの事が好きだったんだと……。
「俺も、お前の事が好きだったらしい…だから、面倒みろよ」
そう耳元で囁くと、雅樹は嬉しそうに頷いた。
古い恋にケジメをつけた日、新しい恋をみつけた。
だから、ここから始めればいい。
二人でゆっくりと歩きだせればいいのだから…。
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