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「カンナ君、実は前に話していたことだが。」
「はぁ……」
こんなに大量に人間がいる中で、何故僕を見つけられるのだろう。
ついそう思ってしまうほど、今目の前にいる人物にいつも声をかけられる。
どこの国のどこの人かは忘れたが、あまり好ましい人ではないことは覚えている。
もちろんそんな内心が顔に出ないように努力しながら、僕は淡い笑みを浮かべた。
こういった大人の世界で学んだ、所詮営業スマイルである。
「あの、申し訳ないのですが……」
「嫌だねぇ、忘れてしまったのかい?」
そう言って、ゴテゴテの指輪を付けた手で握られる。
その瞬間、背筋にゾワゾワッと悪寒が走った。
「あの……」
「君みたいな人間が、そんな弱小国にいるべきではない。
うちの国にきて、働いてみないか?」
露骨なその言いように、さすがに僕もムッとする。
しかしここで感情的になれば国際問題に発展してしまうので、そこはぐっと堪える。
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