プロローグ

6/6
16029人が本棚に入れています
本棚に追加
/619ページ
『あとは、貴女の言葉だけです。』 『…………』 そう言って、隊長たちは自分の部隊に戻って行った。 この少し盛り上がった丘の上にいるのはただ一人。 その人物はゆっくりと足を進め、全軍を見渡した。 『お前ら―――心して聞け。』 拡声器など使っていないのに、その人物の声は隅々まで響き渡る。 『我らは―――今から、魔物の大群に突撃する。』 淡々としたその言葉を聞こうと、兵士たちは皆口を閉じている。 『恐れるなっ! 我らがすべきことはただ一つ……』 鞘から剣を抜き、真っ赤に燃える空に突き上げる。 『愛する者、大切な者を守る―――それだけを考えろっ! 後ろは振り向くな! 前だけを見据え、倒れた者は見捨てろ! 一体でも多く魔物を狩れっ!』 そう言って、剣を振り下ろす。 『そしてこの国の未来と、平和の礎となろう。 ―――行くぞっ!』 『ウォォオオッ!!』 答えは地を揺るがす雄叫びとなり、全軍が魔物に突撃していく。 全ては、守りたいもののために――― 儚く散っていく味方の(しかばね)を越え、全身に血を浴びる。 ―――のちに、『魔人戦争』と言われる、大きな大きな戦いの幕開けだった。 .
/619ページ

最初のコメントを投稿しよう!