16029人が本棚に入れています
本棚に追加
/619ページ
僕の若干かすれたその言葉に、よどみなく答える青年。
なでるように艶やかな銀髪は首の後ろで括られ、少し長めの前髪の隙間から深緑の瞳が覗く。
そんな青年に視線を向けながら、僕は何とか体を起こそうとする。
しかし直ぐさま忌まわしい咳が口から零れ、自身を支えていた腕の力が抜けていった。
「カンナ様っ?!」
「だい―――じょぶ……」
枕に顔を埋めながら、僕は片手を挙げて見せる。
一応言葉で大丈夫と言ったつもりだけど、伝わってない可能性もあるから―――
しかしそんな僕の気遣いなどまるっきり無視して、青年は慌てて僕の背中を撫でてくれた。
「お願いですから、無理しないでください。」
「ん……」
心底心配している青年の言葉に、胸を上下しながら僕は頷く。
しかし直ぐさま傍らにある青年の腕を掴むと、咳のせいで潤んだ瞳を向けた。
.
最初のコメントを投稿しよう!