魔法

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まるで、魔法のようだった。 先生が、授業中私を怒るのは日常になっていた。 「榎本、貴様~!」 と、いつものように始まると、みんなは急に、無表情になって石のように固まってしまうようになった。 私だけが、笑った顔で、きょろきょろとみんなが固まってしまったのを見ていた。 私は、いつも 誰か一人でいい、 先生の魔法にかからずに 『可哀想』 と、私を見ていてくれる人がいないか探していた。 でも居なかった。 授業が終わり、先生が教室を出て行くと、魔法がとけるように、みんな動き出す。 救いだったのは、魔法がとければ、 みんな普通に私に接してくれることだった。 気を使って、話かけてくるでもなく、 一度も誰も、羽村先生の話はしなかった。
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