2874人が本棚に入れています
本棚に追加
「ありがとうございます」
羽村から、コーヒースティックを受けとって、
みんな嬉しそうに牛乳に混ぜていく。
羽村は、ずっと私を見ながらゆっくり配っていく…
私は、
もうわかっていた…
みんなが、羽村の持つ箱の中を時々背伸びして見ていた。
何十本とたっぷり入っているのが見える。
楽しそうな渦の中で、
私は想像していた…その時が来た時の私を。
『私だけもらえない…私だけもらえない…私だけ…』
机の上を見ながら、呪文のように繰り返していた。
ピタッと、
羽村が私の後ろで止まったのがわかった。
みんなが兵隊のように、
いっせいに私を見る音がした。
『恥ずかしい』
全身から汗が吹き出していく…
いつの間にか、私は息を止めていた。
「はっ」
息をした時、もうとっくにことは終わり、何もなかったように食べ始めていた。
また、私だけがあたりを見回した。
「?」
教室の中に、真っ青な顔をして給食に手をつけていない子がいた…
『澤井くん?……佐藤さん…!』
二人の机の上にも、
コーヒースティックは配られていなかった…
最初のコメントを投稿しよう!