平穏な日々の崩壊

2/4
35人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
つねに喧騒と活気に満ち、“眠らない都市”の異名を取る大都市ザナルカンドも、その夜ほどのにぎわいを見せることは希だった。 同地でもっとも話題のスポーツ「ブリッツボール」の名選手として絶大な人気を誇りながら、10年前に忽然と姿を消し、伝説と化した男――ジェクト。 今夜は、彼を記念したブリッツ大会「ジェクト記念トーナメント」の決勝戦が行われるのだ。 決勝に勝ち残ったチーム「ザナルカンド・エイブス」のエースは、弱冠17歳の少年ティーダ。 ジェクトの息子である彼もまた、周囲の熱い期待を一身に背負っていた。 だが、激励してくれるファンから“ジェクトの息子”と呼ばれるたび、彼は憂鬱な気持ちになる。 ティーダにとって、ジェクトは決していい父親ではなかったし、そんな男の影を重ねて見られるのはたまらなかった。だから、亡き父の映像を映した高層ビルを見上げても、彼は感傷にふけったりはしない。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!