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一面が雨で濁った川のような雲が広がり、胡麻プリン色のアスファルトが溶け込んで、青い空を飛びたいと願う鳥は虚しさを引き立たせる。
生きる意味が無いと思ったことはないが、居る意味が無いと思ったことは幾度とあり、その度に窮屈な教室を飛び出してはフェンス越しに空を眺めるのが癖になっていた今日この頃。
不意に隣を見たらやはり、僕以外にも居る意味が無いと考え、僕ですら行動に起こせないフェンス向こうに渡る人も居るんだなと純粋に感心した。
「ん…フェンス向こう?」
彼女は目が合うとニコリと微笑みかけ、僅か15センチしかない足場で空を背に手を離した。
「ちょっ!!まっ……」
全身の血が沸騰した感覚に身震いする。掴んだ手が冷や汗で滑るのも余計に息を荒くさせた。
「離せよ」
「嫌だっ!!」
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